メンタルヘルス担当者が注意すること ~4つのメンタルヘルスケア~

前回、メンタルヘルスとはなにか詳しくお話しました。今日はそれを踏まえて、メンタルヘルスケアをお伝えします。

4つのケア

職場におけるメンタルヘルス対策のガイドラインとして、厚生労働省(旧労働省)から2000年8月「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」、その改訂版として2006年3月「労働者の心の健康の保持増進のための指針」をまとめ、その指針の中でメンタルヘルスに関して4つのケアがあります。

また、職場におけるメンタルヘルス対策の指針について、独立行政法人労働者健康福祉機構が、職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~としてまとめています。この指針では、メンタルヘルスの基本的な考え方を、次のように定めています。

事業者は、自らが事業場におけるメンタルヘルスケアを積極的に推進することを表明する

とともに、衛生委員会等において十分調査審議を行い、「心の健康づくり計画」 を策定する

必要があります。また、その実施に当たっては 「4 つのケア」が継続的かつ計画的に行わ

れるよう関係者に対する教育研修・情報提供を行い、「4つのケア」を効果的に推進し、

職場環境等の改善、メンタルヘルス不調への対応、休業者の職場復帰のための支援等が円

滑に行われるようにする必要があります。

この4つのケアというものは

1. セルフケア

2. ラインによるケア

3. 事業場内産業保健スタッフなどによるケア

4. 事業場外資源によるケア

となります。では、ひとつひとつ詳しくみていきます。

1.労働者自身による「セルフケア」

労働者が自ら行う「セルフケア」から、メンタルヘルス対策の第一歩は始まります。労働者が自身のストレスや心の健康の状態を把握するとともに、自らストレスの軽減や解消を図るといった対処をすることが大切であることを示しています。

●ストレス反応をコントロールする方法を学び、ストレス耐性を高める

自分でストレス反応をコントロールする方法を学び、職場でのストレス耐性を高める「セルフコントロール研修」と呼ばれる手法が有効といわれています。この手法は、自分のストレスの「現状」をよく知り、上手にストレスと付き合うための「心理学的スキル」を学ぶものです。ここで大切なのは、ストレスをどう捉えるかということです。例えば、新しい仕事を担当することになった時、それを“脅威”と捉えるのか、“コントロール可能なもの”として捉えるのかによって、その後の状況は大きく違ってくるのです。ストレスをどう捉えるかによって、心身の反応は両極端なものになります。そのためストレスに遭遇した時に、どういう対処方法を取るかが重要になります。自分自身でストレスをうまくコントロールできれば仕事の生産性が向上し、仕事に対して前向きになれるでしょう。

●ストレスに対処する方法

◆「感情・思考」の状態を記録する

ストレスを感じた時、自分の「感情・思考」の状態を毎日記録していきましょう。意識して日々の感情・思考を記録することによって、自分の認知のパターンや傾向に気づき、ストレスを感じない別の考え方を探すことができるようになります。

◆「リラクゼーション」スキルを習得する

「リラクゼーション」とは、ストレスを受けて発生した感情や生理反応を、できるだけ軽減していくことです。リラクゼーションによって体の反応を変えることで、感情も変えることができるようになります。例えば、「筋弛緩法」「呼吸法」「自律訓練法」といった手法を学び、ストレス感情の減少、肩こりなど筋肉の緊張の減少を図ることが可能です。

◆「対人関係」スキルを習得する

「対人関係」を良好に保つことは、会社組織においては非常に重要なことです。また、自分の意見や考えを相手に上手に伝えることができれば、それは自信へとつながっていきます。

2.管理監督者による「ラインによるケア」

セルフケアの次がラインによるケアで、管理者が部下のストレスにどう対処していくかということです。管理者が部下である労働者の心の健康状態を把握し、長時間労働や心理的負荷の改善、部下が自発的に相談しやすい環境づくりなどが求められています。

●日頃からの管理・指導とともに、専門家へのつなぎ役としての知識を身に付けておく

管理者には部下の健康状態とともに、労働時間や仕事の量・質をチェックし、職場での人間関係が円滑に維持されているかどうかを常に把握しておくこと求められます。部下がストレスをためていないか、またそのストレスに対処しているかどうかを見極め、心身ともに健康で仕事ができるよう管理・指導し、部下の心身の健康に配慮します。そのためには、部下の不満や抱えているストレス、仕事に対する意欲や気力などについて、話を傾聴する時間を確保することが重要といえるでしょう。

●注意事項

1.管理者は専門家への“つなぎ役”として、必要最低限の知識を身に付けておきましょう。

2.部下が病気かどうかは専門家の判断に任せましょう。健康そうに見える人でも、内面はそうではないことが少なくありません。管理職は日頃から部下がどのような状況のときにストレスを抱えやすいのは把握し、職場の環境などの改善に努めていきましょう。また、部下から相談を受けやすい環境を作り一緒に対応し、前向きに仕事に取り組めるように働きかけていくことが大切になってきます。また、部下が休業から復帰にするさいの支援も丁寧に行っていきましょう。

3.事業場内の健康管理担当者による「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」(内部EAPという)

個人でのケア、管理者によるケア、その次は「EAP」(Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)を使用したものです。この「EAP」とは、ンタルヘルス対策として相談室を設けたり、カウンセラーを配置したりして、従業員を支援するプログラムのことです。

健康管理担当者とは、産業医や衛生管理者など産業保健スタッフを指します。彼らは職場における心の健康づくりを目的とした活動の提言・推進や、労働者・管理監督者を支援する役割を担うとしています。

●産業保健スタッフなどが職場環境やストレスの状況を評価、改善管理者と協力して改善を図る

産業保健スタッフは職場のストレス、上司や部下との人間関係、セクハラ・パワハラ、キャリアに関する問題、プライベートな悩みなど、働く人の仕事の生産性に影響を与える課題の原因と客観的に向き合い、解決の糸口を探し、健康な状態で安定して働く状態をサポートします。そして、職場環境やストレスの状況について評価し、管理者と協力してその改善を図ります。また、具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案を行い、社内に反映していきます。そして、自社内に労働者の心の健康相談に応じる相談機能を設置すると同時に、専門的な治療を要する労働者に対しては、適切な外部EAPを紹介し、心の健康問題を有する労働者の職場復帰や職場適応を指導・支援することが求められています。

もちろん、休業後の労働者への職場復帰における支援も大切な役割になります。

4.事業場外の専門家による「事業場外資源によるケア」(外部EAPという)

最後は、外部EAPを使用したものになります。労働者は相談内容が社内に知られることを望まない場合が少なくないことから、メンタルヘルス対策支援センターや、産業カウンセラーなどの積極的な活用が望まれるとしています。 企業の安全配慮義務については、2008年3月より施行された「労働契約法」に明記されており、職場としてはコンプライアンス・法令遵守の観点からも対策が求められています。

●近年ではカバーする領域が広がり、利用率が向上

この外部EAPを利用する企業が増えてきました。その理由としては、コストが安いことと内部EAPと比べて利用率が高いことがあげられます。外部EAPは社外にあるためプライバシーが厳格に守られ、利用する従業員にとってハードルが低いので、結果的に疾患に至る前の早期対応が可能になるのです。

また、現在ではEAPの認知度が上がり、新たにEAPを扱う企業も数多く出てきました。さらに、EAPがうつ病などの疾病への対処だけではなく、心身の問題の予防やカウンセリング、そして家族やプライベートな問題、あるいはキャリアや将来的な問題にまで広くカバーするようになってきたことも、利用率を上げる要因となっています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする