前回、前々回とメンタルヘルスのお話をしてきましたが、今回で最後となります。今日は、外部EAPの選び方と職場復帰のお話です。
専門的なノウハウを持つ外部資源= EPA専門会社をフル活用すると、メリットがある場合が多いようです。例えば、次のような様々なニーズに対応できるとしてEAPが利用されています。
・新規のメンタル疾患による休職者を減らしたい
・予防的対策に重点を置きたい
・組織ごとのケース対応を円滑化したい
・復職支援や管理職への指導教育を体系化したい
ここで重要なのは、職場のメンタルヘルス対策で効果を出していくために、自社のニーズに合ったEAP会社を選ぶことです。
外部EAPを導入するメリット
1.個人のパフォーマンス向上
メンタルヘルスに不調を抱える社員は、仕事のパフォーマンス低下に伴い、その業務生産性も著しく低下させると指摘されています。EAP導入による予防・早急な対応を行っていくことにより、これらを最小限にくい止めることができます。
2.労災予防やリスクマネジメント
近年、労働基準局からの指針により、メンタルヘルスに関連する労災の認定基準が緩和されました。それによって、過労自殺してしまった社員に対して労災認定されるケースが増えてきています。メンタルヘルス問題を放置することは、企業の経済的リスクを引き上げます。問題を抱えた社員に対し、早急に対処を取れる体制を整えることで、労務災害を未然に防ぐことができます。
3.企業イメージの向上
社員が問題を抱えた時に利用できるプログラムを提供できるという点で、「社員を大切にしている会社」であることを示すことができます。
4.医療費の削減
何らかの問題を抱えた社員を長く放置しておけば、やがて業務上の事故などを引き起こす可能性も高くなります。事故が深刻化すると医療にかかる期間も長期化し、企業が負担する医療費の負担も多くなってしまいます。 EAPが継続的予防策を講じることで、このようなリスク管理も可能となり、結果医療費の削減に繋げることができるのです。
EAP導入前の社内準備の流れ
EAP導入のメリットをお話しましたが、ただ専門機関にただ依頼すればよい訳ではありません。次にどのように取り入れていくのかを説明します。
1.実施するメンタルヘルス対策の決定
まずはメンタルヘルス対策を行う目的を明確にするところから始めます。例えば、次のよ
うなものが挙げられます。
新規のメンタル不全による休職者を減らしたい
予防となる対策を徹底したい
それぞれの目的に合わせたメンタルヘルス対策を設定する事が大切です。
2.社内資源との調整を行う
メンタルヘルス対策の決定後は、その対策のどの範囲までを社内スタッフで実施するのかを決めていきます。
3.委託するサービスの内容の決定
実施するメンタルヘルス対策、社内資源スタッフの行う範囲が決定したあとは、外部EAP機関に委託するサービス内容を検討します。社内資源スタッフと外部EAPとの連携を前提としておくと、その後のEAP導入が円滑に進みます。
外部EAPを導入する際のチェックポイント
≪対応状況≫
・具体的なケースや質問などを聞いた時、躊躇なく応答ができているか
・セキュリティーや相談した内容の秘密保持が厳格に守られているか
・スピィーディーなブッキングができているか
・基本的な「管理体制」が整っているか
≪サービス内容・コンテンツ≫
・いろいろなケースに対応できる「ネットワーク(紹介先)」を確保しているか
・質の高いカウンセラーを確保しているか、育成しているか
・精緻なカウンセラー養成プログラムを持っているか
≪その他≫
・料金があまりに安すぎはしないか(一人当たり年間数千円が相場と言われている)
・利用率が低すぎないか(5%以上が一つの目安と言われている)
最後に職場復帰に対する支援についてお話します。
職場復帰
心の健康問題で休業している労働者が円滑に職場復帰するためには、職場復帰プログラムの策定や関連規定の整備等により、休業から服飾までの流れをあらかじめ明確にしておくことが必要です。職場復帰支援に関する体制を整備・ルール化し、教育の実施等により労働者への周知を図っていきましょう。具体的な支援については、中央労働災害防止協会の〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きがあります。
流れとしては、
1. 病気休業開始および休業中のケア
2. 主治医による職場復帰可能の判断
3. 職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成
4. 最終的な職場復帰の決定
5. 職場復帰
6. 職場復帰後のフォローアップ
となっています。
1.病気休業開始及び休業中のケア
労働者から管理監督者に主治医による診断書が提出され、休業が始まります。労働者が病
気休業期間中に安心して療養に専念できるよう、次の項目についてお伝えしましょう。
・傷病手当金などの経済的な保障
・不安、悩みの相談先の紹介
・公的または民間の職場復帰支援サービス
・休業の最長期間
2.主治医による職場復帰可能の判断
主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断
していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断
とは限りません。このため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等に
ついて、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要です。
3. 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
必要な情報の収集と評価を行った上で職場復帰ができるかを適切に判断し、職場復帰を支援するための具体的プラン(職場復帰支援プラン)を作成します。
4.最終的な職場復帰の決定
事業者による最終的な職場復帰の決定を行います。
5.職場復帰後のフォローアップ
職場復帰後は、管理監督者による観察と支援のほか、事業場内産業保健スタッフ等によるフォローアップを実施し、適宜、職場復帰支援プランの評価や見直しを行います。
いかがでしたでしょうか。少し長くなってしまいましたが、メンタルヘルス、メンタルヘルスケアについてお話しました。メンタルヘルスの対応等で悩まれる際の参考にしていただければと思います。